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ジンコウガクエン従軍日誌

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【プレイクラブ】クァルナルフの街 SCENE.4

プレイクラブ
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 「クァルナルフの街」、四回目の更新となります。ここでちょうど半分。実は一度筆が止まってしまったのもここで、半年ほど続きが書けずにいました。運良く「クァルナルフ」は再開できたのですが、未完の駄作はまだまだ腐るほど。昔はただ、ひたすら文字を相手に睨めっこをしていただけだったけれど、今は幸いにもスタジオという存在がある。今後、埋もれた作品がイリュゲーのお蔭で日の目を見れれば…なんてのはあまりに虫の良い話か(´д`)





 
SCENE.4

 それから、用事がなければ決して彼女を呼び付けなかった自分は、ウルミエと話すようになった。ぽつりぽつりと、子供が新しい言葉を覚えていくように、私は彼女と少しずつ会話をし始めた。顔を上げればお互いすぐ近くに居たから、自分もウルミエも、気兼ねなく話しかけられるようになるまでそう時間は掛からなかった。 仕事にもせずに、酒を飲みながら夜通し語り合う日もあった。酒に慣れていない彼女の方が大体先に酔い潰れて寝てしまうのだが、私はそれにしばらく気付かずに一人で喋っているような、そんな夜もあった。

 春の暖かい日差しの中で、ウルミエの口ずさむオノールの伝承歌を聴きながらまどろんだ。

 夏のうだるような暑さから逃げるように、街の郊外を流れる川へ出ては日が暮れるまで涼んで過ごした。

 秋の晴れ渡った夜空の下、星々を指差して先人の語った伝説に思いを馳せた。

 そして冬の日。暖炉もない部屋で私は、寒さを凌ぐためにウルミエを抱いて眠った。

 いくら男との生活に慣れてきたとはいえ、かつて勤めていた酒場での一件を思い出したのか、彼女は僅かにベッドに入るのを躊躇った。しかし、すぐにこちらの目的がそうでないことを知るなり、彼女は少し恥ずかしげに私の胸に顔を埋めてくる。その人肌の温もりが不思議と懐かしい。 今までに自分の欲望の捌け口にした女など数知れない。それでも不思議とウルミエに対してはそんな劣情を抱くことがなかった。ぬるま湯に漬かるような日々の中で、いつの間にか私は牙を抜かれた狼のように腑抜けてしまったのか。それとも壮年と呼べる歳の自分はもう、男としての寿命が尽きたのか。

 もしくは私はウルミエを――

 いや。そんなはずはないと首を振る。だから私は自らの迷いを誤魔化すために、独り言のように腕の中の少女に話しかけるのだ。

「……お前は、この街が好きか」

「はい。好きです」

「何故だ。こんなにも住みにくい街だというのに。 お前も知っているだろう? ここでは貧しさと弱さはそれだけで罪だ」

「それでも、わたしの生まれた場所だから。どんなに辛くても苦しくても、わたしはこの街が好きなんです。父も、母も、妹も。そしてみんなも……」

「オノールの民の最後の楽園、それがクァルナルフか」

「……知っていますか? この街の名前の意味を」

「さあな。知っていたのかもしれないが、よく覚えていない」

「ふふ。いつか貴方にも教えて差し上げます」

 いつか……と、そう呟いて寝息を立て始める彼女。その柔らかな黒髪を飽きることなく手で梳きながら、私は眠らずに夜を明かした。安らかな表情で眠る少女の寝顔をいつまでも眺めながら、未だ見出せぬ答えを求めて長い夜を明かした。

 そして冬が終わり、私がウルミエと出会ってから一つの季節が巡る。


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Comments 2

きにちみ  
No title

今回も主人公とウルミエの絡みでしたね。
そういうわけでこの世界がどういうものなのかまだ分かりませんでしたが、話の中では一年が何事もなく経過しているようですので、竜王がいて暴れまわっているとか、ガストラ帝国と戦争中とか慌ただしい世界ではなく、話の展開もゆっくりのような気もします。
これから何か急展開でもあるのでしょうか。
それとも、ファンタジーとはいうものの、上のようなスペクタクルな内容ではなく、男の女の関係を中心に描写していくヒューマンドラマなのか、今後の展開を勝手に色々と想像すると面白いです。

今更ですが、オノールとかクァルナルフとかいう名称はすべてオリジナルでしょうか?
過去記事で言及していたらすいません。^^;

2015/08/22 (Sat) 00:21 | EDIT | REPLY |   
フート軍曹  

きにちみさま
 コメントありがとうございます。慌ただしい世界じゃないようですネ。今のところは(笑)。短編なうえに一人称視点ですので、世界観についてもあまり詳しく書いてません。「私」は口下手のようですし、あまり自分のことも語りたがらないようですので、今はただ、「私」になったつもりで同居人ウルミエに不器用に接してあげてください(笑)。

 用語については全て思いつきで、オリジナルであります。確か「クァルナルフ」はゾロアスター教で「栄光」の意を持つ「クワルナフ」から語感を借りた気が。オノールでの意味とはまったく違いますが(笑)。

2015/08/25 (Tue) 22:48 | EDIT | REPLY |   

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