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ジンコウガクエン従軍日誌

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小ネタ。慎子編

ジンコウガクエン
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 慎子、好きですか。自分は大好きです。ヒロインベスト5に入るかもしれません。

 いじらしいところとか、ときどき素が出ちゃうところとか、なんとも堪りません。キスしたいのがバレちゃって、願い叶った果てに「馬鹿ァ」とへなへなになってしまうのも、「いちっ、にっ、さんっ、しっ、ごっ、ろくっ、しちっ、はちっ」に感じる妙な色気も、「ねぇ、ちょっといい、かな?」の『かな』のアクセントの魔力も、コマンド「ちょっと来て」の台詞の「来て……」とかそれって挿入前じゃね?なドキドキも。

 ここまで悪化すると、妄想は病気になります。重篤です。人間として健やかに生きるために、頃合を見て吐き出さねばならんのです。ゆえにこの小ネタを捧げます。とりわけ慎子がお気に入りのイクセマさまに。


……


「おーい、○○ー」

 何処かで誰かが呼んでいる気がする。休み時間の喧騒の中、ふとその声に気付いて俺は首を巡らした。

「○○ってばァー」

 ああ、この間延びした声は活子だ。俺は教室の入り口に立っている彼女を見つけると、手を振ってやる。

「○○のカノジョ来てるよー」

 おう、と答えて席を立つ。うろたえる聡子に、射るような目つきの理子の二人。寒気を感じたかと思えば、すぐ背後に笑子が無言で立っていた。朗子に制服の袖を引っ張られ、尖子には足掛けを食らい、寧子と漢子が執拗に前を阻む。人の波を縫うようにして当の「カノジョ」の元に辿り着くと、顔を真っ赤にした慎子が廊下で待っていた。



「はい、カレシ来ましたー」

「や、やめてよ。恥ずかしいじゃん! てか、なんなの? カノジョって……」

「いやさ、別クラスの女子が訪ねてきたら言うらしいんだわ。……で、何の用?」

「……部活のこと」

 慎子とは中学校からの付き合いだ。当時はお互い陸上部に所属していて、彼女と知り合ったのも、競技場のスタートラインで隣同士になったのが最初だった。家も近かったせいか、二人でよくつるんで遊んだ。奇しくも進学先の高校も同じ、部活も同じ。今はクラスが違うが、何かと顔を突き合わす時間は多い。
 昔から慎子は運動神経が抜群で、特に彼女は足が速かった。走るフォームがとても綺麗で、よく俺はその動作に飽くことなく見惚れたものだ。訓練された人間の動きは美しい。今やインターハイに名を連ねるほどの実力者の慎子だが、何よりも純粋に彼女は走ることが好きだった。

……

 放課後、夕日に染まったグラウンドに俺と慎子はいた。後輩連中はすでに下校しており、二人きりのトラックを軽くランニングして流す。部活中は先輩として厳しく後輩を指導する俺たちだが、こうして二人のときはゆったりと運動し、心地よい疲れと充足感と、己の身体の動きを楽しんだ。



「はい、お疲れ。だいぶ涼しくなったから走るの気持ちいいね」

「おう、サンキュ。確かに、これくらいの気候が一番過ごしやすいよな」

 慎子から受け取ったスポーツドリンクを火照った喉に流し込んだ。流れる汗を拭い、ときおり吹いてくる初秋の爽やかな風に身を任せる。ドリンクの半分を慎子に返すと、彼女は何の躊躇いもなく口を付け、その残りを飲み干した。

(こいつ、間接キスとか気にしないのかな?)

 二人でいるときは自然体だが、慎子は人見知りが激しい。おまけに学年一の純情乙女で有名である。

『ど、ど、ど、ど、どっちでもいいでしょ? ……しょ、しょ、しょ、しょ、処女じゃないしっ!』

 誰が聞いても明白な見栄だった。然子あたりが出てきて「ダウトです!」と突っ込みそうな。そんな大胆発言を、経験者ですら引いてしまいそうな大声でするのだから、その神経のず太さだけは確かだ。

『すっ、すすすす好き……なんじゃないでしょうか』

 口調がどもったり、敬語になったりするのもご愛嬌ってやつか。そういえばこの一連の会話、慎子の友人たちが妙にこちらを見ながら話していたっけ。俺に気付いた慎子がすっ飛んで来て、無言で小突かれまくったのには釈然としなかったが。

「……あ、あれ理子さんと寧子ちゃんじゃない?」

 ふと慎子が指を差す。見れば、グラウンド脇の裏通りを歩く理子と寧子の姿があった。手を繋ぎ、仲睦まじそうに笑っている。やがて二人は俺たちに気付くと、はにかんだ様子で小さく手を振った。同性愛をカミングアウトした理子と寧子だが、先生を含め、クラス公認カップルとして皆に暖かく見守られている。

「なんか、いいなぁ……」

 ボソリと慎子が目を細めて呟いた。ポニーテールにした艶やかな黒髪が風になびいている。いつの頃からだろう、彼女が髪を伸ばすようになったのは。どうやら化粧も覚えたらしく、中学のときよりも慎子はだいぶ垢抜けた。俺自身、彼女の「女」としての成長にどきりとしてしまうことがよくある。

「わたしなんて恋人ばかりか、男の人ともマトモに喋れないもん。それに、どうせブスだしモテないし……」

 あはは、と自嘲気味に笑う慎子。それを俺は否定した。思考よりも先に、言葉が先をついて出た。どうしてかは解らなかったけれど。

「あのな、慎子は全然可愛いし、女の子らしくなったと思う。そこまで自分を卑下することないだろう」

「ふぇっ!? で、で、でも……こ、恋とか愛とかっ、その、よく、わかんないし。したことないし……」

「練習すりゃいいんだよ。誰だって初めてはある。それこそ走るのと一緒じゃんか。恋愛も部活みたいもんだ。一から練習して、順序を踏んでさ。いきなりハイペースで行ったって、息上がっちまうだろ?」

「……うん」

 俯く慎子の顔に俺は後悔する。我ながらおかしな理屈だと思った。恋愛に練習もクソもあるか、と。慎子を褒めたかったのか、励ましたかったのか。そもそも俺は何を言いたかったんだか……。 

「……」

「……」

 気まずい沈黙。空気を変えようと努めて明るく「さ、ぼちぼち帰るか!」とおどける俺に、意を決したように慎子が顔を上げた。

「……じゃあ、一緒にやってよ」

「一緒にって、何を?」



「そ、その……『カレシ』『カノジョ』の練習っ! 部活と同じだって言ったでしょ。……だったら、いつもみたいにあんたが付き合ってよ」

「ええと。つまり……」

「べ、別に本当に恋人やれって言ってないし! というか、あんたなんか絶対、す、す、す、好きになんてならない、から!」

 思い切り唾を飛ばしながら、噛みながら。涙目で、頬を真っ赤に染めた慎子が堪らなく可愛く思えて。可愛いからこそ、少し意地悪もしてみたくなる。

「なんだかなー。さすがに俺もショックだなー。赤の他人でもあるまいし、恋人になる可能性がゼロって言われちゃうと、心折れちゃいそうだなあ」

「……じゃあ、に、にじゅっぱーせんと?」


「俺、これから男として生きてく自信ないわ」

「ウソウソ! はちじゅっぱーせんとッ!」
 
「……け、結構高いんだな。ははは」

「……っ」

 再び気まずい沈黙が二人の間に落ちる。今度は先ほどとは違い、ひどく甘酸っぱい空気だった。チラチラとこちらを窺う慎子の視線に耐えかねて、俺はなかばヤケになる。

「よし! じ、じゃあ早速明日の休みにデートにでも行くか?」

「行く! あ……い、行ってあげてもいいし……」

 そして即答。ぱっと華やいだ笑顔も、我に返ったようにみるみる赤面に変わり、どういうワケか慎子は脱兎の如くトラックを駆け出した。これまでにないほど速い全力疾走で。

「……おいおい、あれって新記録行けるんじゃないか?」

 俺の予想通り、慎子は夏のコースレコードをあっさり塗り替える。そして季節がうつろうこの秋の始まりに、俺たちは恋人同士(仮)になった。これからの先のことは全く予想がつかないけれど、二人の何かが変わりそうな気がする。



 そんな気がするのだ。






 ※冒頭の「カノジョ」「カレシ」は竹書房より刊行中の「制服あばんちゅーる」からネタをお借りしました。

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Comments 6

りる  
No title

おおおいいですな!
慎子な感じがモリモリ出てます。
私の慎子キャラは教師枠になってます。
デート誘った時の
「行く! あ……い、行ってあげてもいいし……」
いいですよね。

2014/11/01 (Sat) 15:48 | EDIT | REPLY |   
フート軍曹  
…だし!も彼女の特徴ですよね

りるさま
 なるべく本編中の台詞を使おうと心掛けてます。某あぷろだにあった全キャラ台詞集が非常によい仕事をしてくれてます!ゲーム上で確認するとなるとかなり忍耐が要りますからね……(苦笑)。
 慎子のイメージを損なわずに書けて、自分もほっとしております。彼女は心に残る台詞も多いし、恋人関係になる前と後ではだいぶ印象も違いますよね。自分は特にそれで好きになったクチです。 

2014/11/01 (Sat) 20:40 | EDIT | REPLY |   
(iwi)  
No title

寧子と理子w
結局あの後カミングアウトしちゃったのかぁ。
思い切りすぎというかなんというか、思い立ち切って
そのルート突き進んだのだなぁw

・・・はさておき、慎子は好きな方ですが
初めて刺してきた人なので若干怖いです。
そのジケンがなければマイキャラも賢子じゃなくて慎子になってたかも・・・。

同じ部活で青春・・・部活終わりの間接キス・・・憧れますのう。
ま、自分は異性居ない部活だったからべ、別に気にしたりとかっ、してないし(涙目)
文化部だったから陸上部は窓から眺めるものだったけど
さすがにここまでラブラブはしてなかったとはいえ
声の聞こえない漫才を見てたら羨ましかったでs・・・

・・・。
アカン、脱線しまくってるしどんどんまずいものを暴露してる気がする・・・。
あ、次の小ネタにどうですか。窓からいつもこちらを眺める視線。
間違いなく読んで悶え転げまわる自信がありますがw

2014/11/02 (Sun) 09:26 | EDIT | REPLY |   
イクセマ  
No title

wktk(;゚∀゚)……!………!!(声にならない喜び)
ありがとうございます ありがとうございます
ぱーせんとの件が可愛すぎて萌え死にそうですヾ(*´ω`*)ノシ
「……じゃあ、に、にじゅっぱーせんと?」(口元に手をあてて上目使いで)
「ウソウソ! はちじゅっぱーせんとッ!」(控え目なアクションで否定しながら大慌てかつ大声で)
「……っ」(アニメでよくあるボンッってSEと共に赤くなるやつ)
で脳内映像再生されました
この件が可愛すぎて萌え死にそうです(大事なことなのでry
同性愛をカミングアウトしたことにインパクトがあった気がしましたけどすぐに吹き飛びました

2014/11/02 (Sun) 21:00 | EDIT | REPLY |   
フート軍曹  
ネタいただき(゚ω゚)

(iwi)さま
 一応別のセーブデータという設定で、理子と寧子の二人はお互いに好き合って、プラトニックな交際から始めている……と妄想していただければ(笑)。

 なんと!それは愛ゆえか憎しみゆえなのか…。とりあえず合掌(笑)。昔、二股かけられたのにムカついて、闇持ちいっぱい転入させたら、スプラッタな悲鳴とともに画面がレッドアウト。真夜中に聞いたあの叫びが恐ろしくて、闇持ちには金輪際関わらないと誓いました(笑)。

 いいですねえ。小さなキーワードでも大きな妄想への第一歩です。ご馳走様です。そうですね、うちは凛子が茶道部ですし、遠くから見つめる、窓越しの恋慕とか純な大和撫子向けかも。

 ……なんか行けそうです(笑)。

2014/11/03 (Mon) 22:24 | EDIT | REPLY |   
フート軍曹  
妄想家のセンスありますよ!

イクセマさま
 はい。「好きになっちゃう確率」でございます(笑)。イクセマさんの脳内映像再生が素晴らしく、書いて良かったとニヤニヤしております。とゆか「……っ」ここの赤面沸騰までは妄想を究められませんでした!まさか
頂いたコメントからさらなる萌えをお返し頂けるとは!(笑)軍曹は感服しております。

 理子と寧子は色んなイミでインパクト植えつけてしまったようなので、ここでちょこっと救済を入れてみました。今後二人が幸せになれるよう見守っていただけたらと思います。

2014/11/03 (Mon) 22:26 | EDIT | REPLY |   

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